その日から…

その日から…
19年前 
震災からしばらく、まだほとんどお店が開いていない元町商店街の「フリュティエ・コムシノワ」の前に小さな行列があった 
焼きたてのクレープとホットワインを売るだけの小さな屋台  
いいのかな?こんな時に、こんなお菓子食べて 
少し戸惑いながら食べた 
粉糖がフォークの形に抜かれて振ってあるだけのクレープと紙コップのホットワイン 
美味しかった

それからほんの少し後 
坂を上っていく 
まだまだお店は開いていない当然お菓子屋も 
人も歩いていない 
「わざわざありがとう」と言って迎えてくださった 
「もう無理だと思ったんだけど、待ってくれている人がいるかなっと思って」 
「僕はこれしかできないから」 
いつもとは少し違うけれど
そこには確かに「イデミ・スギノ」のお菓子があった

シュークリームなんかを笑いながら食べることができる幸せ
お菓子を作れるという事が実は当たり前じゃないという事
お菓子屋の果たすべき役目はこんなところにもあると思います

この記事を書いた人

久保 徹也