赤ワインガレット物語 その3「今年の出来は…」の巻

赤ワインガレット物語 その3「今年の出来は…」の巻

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とあるお店のガレットブルトンヌの美味しさに驚き、「こんなおいしいガレットを作lりたい!」との想いから名付けたのが、「パティスリーガレット」なんです。

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前回の続きです
 カタシモワイナリーさんからもらって帰ったぶどうの皮は、ワインを絞った残りではありますが、とてもいい香りです。早速使いたいところですが、一つ問題が、ワインにするときは「ぶどう」まるまま、つまり皮と種と小枝もタンニンの為に一緒に潰します。もちろんそのままでは生地に入れることが出来ません。そこで、まず分別です。オーブンで乾かしてふるいにかけて… 水に浮かして… よく乾かして手で揉んで… とうみの要領で風で飛ばしてみたり… ぐるぐる回して遠心分離… フードプロセッサーに… いろいろ試しましたが、どれもダメ~。最後の手段でハンドピッキング…「チーフ、絶対無理です~」そりゃそうなんです。ぶどうの実の中に種があるので種だけを取ろうとしたら、一粒ずつ皮と種をはずしていかなくては駄目なんです。せっかく頂いたぶどうの皮、何とか使いたいと思うものの途方に暮れてしまいました。仕方がないので分別をあきらめて他の方法を探ることにしました。

 最初の試作で配合のラム酒を赤ワインに置き換え試したのですが、それでは色も味も全然足りません。その時点でワインを直接足すことはあきらめていたのですが、それならこの皮をワインで戻して一晩おいて… それなら二晩置いて… さらに一週間… 少しは濃くなるのですがまだまだ使えません。そこで鍋で炊いてみることにしました。沸騰するまで… まだまだ、でも何か少し見えてきたような、1/2まで煮詰めてみると「おっ!」これならと試作… 1/4まで… 「もう少し!」 そして最終的にたどり着いたのが1/10。つまり赤ワインにぶどうの皮を入れて、鍋でフツフツ、店中がワインの香りに包まれながら、1/10まで煮詰めて、裏ごしして、濃厚な赤ワインコンクを作ったのです。もちろん濃すぎて、しかもタンニンもきついので飲むことはできません。でもそれがガレットに入ると、ガレットの甘さを赤ワインの渋みがす~っと切ってくれるのです。そのうえ赤ワインの香りが、あとから湧いてきます。狙った以上のおいしさにたどり着くことが出来ました。

一年を通して柏原産ブドウ100%使用の赤ワインとその絞り皮を使った「赤ワインガレット」を作っています。でも秋は特別です。この時期のワインはその年の新酒、しかも一次発酵をしただけ、それも発酵樽の一番の上澄みなんです。贅沢に煮詰めてしまいますが、みずみずしいフレッシュさがあります。そしてワインにあるように、赤ワインガレットにもビンテージがあるのです。コクも渋みも色もその年によって違います。「今年の赤ワインガレットの出来は…」なんて言いながら食べるガレット!ちょっといいかんじですよ~。

さて、2018年物の赤ワインガレットの出来はどうなるでしょうか?そろそろ仕込みが始まります。お楽しみに~

この記事を書いた人

久保 徹也